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2010年12月 2日 (木)

ありがとうとさようならウィンク

A ウィンクのお墓

ウィンクの墓は裏庭の上がり口の直ぐ横にあります。盛り土の周りが少し窪んで、四角い石を一つ置いてあります。石の前にお線香を立てるのに貝殻を置きました。盛り土の周りは土をかなり深く掘って埋めたので、草花の種がない土が盛られて余り草花が生えません。それでちょうど小さな古墳のようなお墓ができました。

ウィンクは歩けなくなって1週間ほどで息をしなくなったのです。お母さんがほんのちょっと目を離した隙に動かなくなって、息を引き取りました。死んだときに居てあげられなかったと悲しむのですが、何度も死んだと思って耳をお腹に当てたら生きていたということが続いた後なのです。

次の日に引き取って貰うつもりで、バスタオルでくるみウィンクがいつも座っていた座布団を引いて段ボールの浅い箱に入れて居間の片隅に置きました。前庭の花壇の白いバラをお母さんは花瓶に生けてお線香をあげたのですが、夜に行くと妙に白いバラが浮かんで見えたました。

火葬のことを市の埋葬センターに問い合わせてみると、立ち会うことができないし遺骨も貰えないそうで、結局、生ごみと一緒に処理するだけだと分かったのです。それで庭に埋めてあげることにしたのですが、お母さんはさすがに抵抗があるようで、「近くの河川敷にお墓を作ってあげてはいけないの」というのです。法律では犬は死ぬと廃棄物、ごみとなり河川敷に埋めると、ごみの不法投棄になるのです。ごみを自宅の庭に生めて処分するのは問題が無いのです。

墓掘り

その日から苦行が始まりました。お墓を掘ることを安易に考えていたので、何度も「しまった、市に処分してもろたらよかった」という羽目に陥りました。大体お墓の深さからして想像していたのは、ものの30センチも埋めれば良いやと思っていたら、人間を埋めるのに近い最低でも1mとインターネットにのっていました。

よくよく考えると、そんなに掘るためには掘るための作業に必要な穴、空間がいるのです。埋めたときに頭ぎりぎりというのもかわいそうです。結局得られた答えは、1m×1m×1.2mということになったのです。最初コレでと思って用意していたスコップが、花壇用の手で持つ奴だったのには我ながら笑ってしまいました。早速大きなスコップを買いに行きました。

掘り始めは意外と順調で、サクサク気持ちよく掘れて行くのです。20センチほどのところでガキッと硬いものに当りました。業界用語で言うガラがでたのです。まんざら穴を掘るのは素人でないと思っていたのです。実は二十歳前後に植木屋の職人のアルバイトを2年ほどしていて、穴掘りは得意種目だったのです。

ガラは石やレンガ、瓦、コンクリートと粘り気のある粘土や赤土が混ざったものが最悪です。特に石やコンクリートの大きいものがあると掘る場所を変えなければならないのですが、それを見極めるのも難しいのです。埋まった障害物の大きさは困ったことに、掘ってみなければ分からないのです。

幸いなことに選んだ場所は差ほど大きなガラはなかったのですが、半分もいかない内に日が暮れて暗くなったので、明日の朝早くからと切り上げました。もうかなりあちこちが痛くなってきていました。

次の日はかなり最初から本気を出して穴を掘ったのです。やっていると昔の穴掘りの技術を思い出して少しずつ賢い掘り方になりました。まず、足場の確保のために半分ずつ交替に掘っていくのです。全体を闇雲に掘っていくのは素人なのです。それも、穴の半分をちょうどスコップのサイズに合わせた深さに平らに堀り、掘った穴の平らな所を足場に残りをまた平らに掘るのです。この平らが肝心なのです。多少の凸凹を気にしないで掘ると、どんどん凸凹になって作業効率が落ちるのです。

埋葬

相当掘ったと思ったのですが、スコップのサイズから見ても1.2mはかなり先です。困った事に土が半端な量でなくなってきて周りは土の山です。ウィンクの遺体の大きさをもう一度確認して「まいいか」と掘るのは止めました。たぶん1mも土を被らないのでウィンクは文句を言うかもしれません。

さそく段ボールの箱ごとウィンクを持ってきて土を被せました。さすがに上に乗って踏み固めることは出来ないので、ずいぶん盛り上がったお墓になってしまいました。お母さんと慧祐も呼んでお花を置いて貝殻にお線香をたてました。3人とも何も話さないでお祈りしたのです。

まだ残暑が残る9月の夕暮れでした。

出会い

ウィンクとの出会いは、ボランティアで犬を飼っている組織があって子犬を見て、気に入った犬がいたら貰えることを新聞で読んで見に行ったのです。車でないと行けないような人里離れた山奥に、沢山の犬をその人達は飼っていました。子犬を飼いたいので見せて欲しいというと、ボランティアの人は真っ黒な子犬を四、五匹箱の中に入れて持ってきました。

子犬は人気があって貰い手が多く、今はコレだけしか残っていないので可能ならば成犬も考えて欲しいと話すのでした。ふとその人の横を見ると子牛くらいもある大きなボクサーがこちらを見ているのと目が合いました。慌てて箱のなかの子犬の中で女の子を探して取上げたのです。

「あ、この子はこの間の神戸の震災で被害にあったおばあさんが飼っていたのですよ」と説明しました。女の子を選んだのは、初めて犬を飼う人はおとなしい女の子が向いていると聞いていたからです。真っ黒だと思っていたのですが良く見ると白と黒の斑でした。帰りの自動車でなんという名前にしようと話していると、長男が「この犬ウィンクしてるみたい」と言うのです。

子犬の名

白と黒の斑で片目が黒く、ウィンクしているみたいなので名前もウィンクに決めました。家に帰って居間の片隅に段ボールの箱を置き、古い座布団を入れてとりあえずウィンクのお家としました。最初の晩は心配なので見に行くと泣くこともなく、尻尾をちょろちょろ振って挨拶にくるのです。お母さんは女の子の癖に度胸のある子だと感心していました

次の朝からウィンクを観察することになるのですがどうも犬種が良く分からない不思議な子犬でした。洋犬には違いないのですが、雑種にしてはなにか雰囲気を持っているのです。本屋さんでいろいろ調べるとどうもボーダーコリーらしいのです。何かの犬種が少し混ざっているのかも知れないのですが、○黒が勝った白黒の斑○顔の長い洋犬の長毛○利発で運動量が多い という特徴を持っているのです。

才能

飼って見るとその才能に驚くのです。まず、無駄吠えしないのです。自分の要求が通らないとたいていの犬は鳴くと思っていたのですが、そんなことがありません。不審な人が玄関に来たりした必要なときは鳴くのです。そして、人の話をよく聞くのです。もちろん相手になって話はしませんが、よく家内と話していると「この犬、話の内容分かっているんとちゃうやろか」と訝る事がよくあるのです。もちろん、自分の話をされているときは必ず反応して、一生懸命考えているのです。「もう少ししたら、話し出すのと違うやろか」という期待を持たせるくらいなのです。二人で言い合いになると仲裁しょうとするのでした。もちろん、コレは嘘ですよ。

前田のマスターは、「なんで犬はウィンクみたいにうまいこと賢う育てられるのに、人間はあかんの」とからかうのでした。

小さいときは子供達二人と一緒に、よく天皇の森の古墳公園に遊びにいきました。鎖をはずすと3匹子犬同士みたいに、うれしくて仕方がない風情で走り回っているのです。日が暮れる頃になって、「もう帰るよー」と呼ぶと一目散に帰ってきて、「首輪をして」というように両前足を私の体に預けるのでした。別に何も訓練したり、教えたりしていないのです。

好なもの

ウィンクの好きなものは「おばあちゃん」と「NT山荘の雪まみれ」、「自動車に乗ること」です。

「おばあちゃん」は家内の母で、何度か家族で旅行をしたときなどに、おばあちゃんに預けるのです。よほどそのときの体験が幸せだったのか、家におばあちゃんが来るとその甘えようは半端ではなく、「おばあちゃん、おばあちゃん、わたしねぇ本当に会いたかったの、つらかったのよ」と言う様に甘えた声で鳴くのです。めったに鳴かないウィンクがです。見ているこちらが嫉妬するほどなのです。

「NT山荘の雪まみれ」は、毎年、友人の白馬の別荘を借りて前田のマスター等とスキーに行くのですがウィンクも連れて行くのです。その白馬の別荘がNT山荘といいます。その山荘の周りを雪まみれになって走り回っているときのウィンクは、本当に楽しそうで生き生きしていて、呼ぶと帰ってくるはずの彼女がそのときばかりは帰ってこないのです。

「自動車に乗ること」は二つの意味があります。自動車に乗ることもウィンクは本当にすきなのですがもう一つ皆と一緒がいいのです。自分は本当に家族の一員と思っているので、仲間外れが嫌なのです。

家のウィンクの順位は一番幼い慧祐と最下位を争っているつもりなので、すぐに慧祐の座布団に座ろうとします。犬という意識はないと思うのですが、女の子という意識はあるかもしれません。お母さんは男ばかりだったのが女の子の仲間が増えたと喜ぶほどでした。

「一番下の女の子なのにどうしてお外に出かけるときは仲間はずれなの」という気持ちなのです。だから、皆で出かけるときウィンクをはずすと本当に悲しそうに見つめているのです。ちょっとでも車で出かける雰囲気があると急いで車のところへ行って乗り込んでしまおうとするのです。家では一番大好きなお母さんでも一度乗ってしまったウィンクを降ろすのは大変なのでした。

晩年

晩年のウィンクは二階に行けないほどおばあさん犬になって、元気がなくなったのですが、散歩を熱心にやると元気になったのです。

でも、すぐに痴呆が出たのか、家の部屋の隅へ隅へと進んで、どこか遠くをながめて泣くのです。

夜中に徘徊するので無理やり抱きしめて眠っていると、僕の手にウンコをしてしまうのです。食欲がなくなって生肉や最後は注射器でアイスクリームをあげたけれどもう元気を取戻すことは出来ませんでした。

思い出をいっぱいありがとうウィンク。さようなら。

いつもお母さんが言うように今度生まれ変わって来るときは絶対人間だよ。

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