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2011年6月26日 (日)

詩・「病棟の回転遊戯」⑤

「食べない人 Ⅰ」

やせて枯れ枝のようになった老人が

看護師にすがるように聞く

「この抗がん剤の点滴終わったら

食べられるようになるやろか」

食欲がないのを

抗がん剤のせいにしているが

聞いているみんなは分かっている

もう終わりが近いのだと

点滴が終わっても老人は食べない

「食べへだら終わりや」

と聞こえよがしに腹水のたまった中年がいう

老人は転室していって

中年が「食べれへん」と言い出す

「食べへだら終わりか・・・?」

「食べない人 Ⅱ」

食べない老人とトイレで会って

「食べな死にますよ」

と意地悪く言ってみた

「点滴で7年持ってまんねん」

と誇らしげに言う

「食べる楽しみなくて何が楽しみなんですか?」

「へへへ、人を食ってまんねん」

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