私の世界・人との邂逅―怪人仁木哲④
仁木研究所の仕事は、知り合いの企業の原稿が主なはずなのですが先生は大した収入にならないので余り気が乗らないのか、ほとんど何もしないで、お客さんが来る以外は私を呼んでパチンコの話や世間話でした。
(私は当時、仁木さんを「仁木先生」と呼んでいたので以下、先生と書きます。)
ただ変なのは、パチンコの話はほとんど奥さんがして、先生は時々相槌を打つだけです。先生は東京のときは、そうではなかったと思うのですが夫唱婦随と言うかいつも奥さんが付いて先生の秘書がわりに世話をしていました。少女がやっと自分だけのお人形を手にしたように幸せそうでした。
奥さんは先生とは正反対の小柄の京女で、若いときはきっとすごい美人だったんだろうなあと思わせる人です。
ただ、そのことを言うと「プイッ」っとして、
「今はどうなの?」
と聞いて、私をわざと困らせるのです。
確かに、先生に会うのは口実で、奥さんの女学校の頃のファンではないかと思う人が何人か尋ねてきました。
先生が俄然やる気を見せたのは、いわば「プロジェクト屋」とでも言うもので、思付いたり、一丁噛み?しようとしたプロジェクトは、『浜大津港湾地域再開発計画』や『八重山諸島身障者コロニー計画』、『国際大学院大学計画』などです。注)現実の組織、計画とは無関係です。
そのようなプロジェクトが始まると、出入りする人が変になって、「ダリ?の弟子の建築デザイナー」とか「某有名大使の弟?」などが来ました。
先生は、まだ万博の頃にやったプロデューサーのうま味が忘れられないのです。
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