私の世界・人との邂逅―小松左京さん

作家の小松左京さんが亡くなりました。

先生は、人生においける出会いの中で、私の疑問に数少なく真摯に答えてくれた大切な人です。

企業の広報アンケートの分析をやったとき、小松先生が主査でした。徹夜で分析したレポートを報告会の前に、主査の先生に説明して了解を得なければならず、自宅にお向かいに行って会議に向かうタクシーの中で説明することになったのです。

タクシー内で先生は要領よく結果を理解してくれて、時間が余ったのです。沈黙を続ける勇気がなくて、思わず聞いてしまったのです。

「先生、いろいろなことをいっぱい本に書かれますがどうしてそんなことが出来るのですか？何かコツがあるのですか？」

若造が非常に僭越な質問をしたのですが、先生はまじめに答えてくれました。

「金澤君、僕はいつも脳に知識の世界地図を持っているようにしているんだよ。そして、何処が未開で分からなくて、何処が分かっているかいつも意識しているんだ。すると有益な知識を持つと、その世界地図が不思議なくらい完成していくんだ。」