私の世界―情け無い船長の会話とイタリア

デノーラ砂和子さんの「ＮＥＷローマの平日シチリア便り」に船長フランチェスコ・スケッティーノと港湾監督局のグレゴーリオ・デ・ファルコ氏の会話が載っていました。http://ameblo.jp/romanoheijitsu

報道の端折った訳ではなく、全会話を載せておられます。若干、読みやすいように私が編集していますので、気になる方は元のブログを見てください。

座礁写真（＝ウィキペディア）

電話は3回あったらしく、

＜1回目21時49分＞

Ｇ（港湾監督局のグレゴーリオ・デ・ファルコ氏）：大丈夫ですか？

Ｓ（船長フランチェスコ・スケッティーノ）：技術的な小さな問題だから、大丈夫です。解決したら、こちらから連絡入れます。

Ｇ：船内には何人ですか？

Ｓ：2～300人です

注）乗客は4000人強。

＜２回目0時42分＞

Ｇ：あと何名が船から降りなければなりませんか？

Ｓ：船員に電話したところ、あと40数名だそうです。

Ｇ：なんで、そんなに少ないんだ？アナタ、船内にいますか？

Ｓ：いや、違います。船尾が沈んできてますんで、船、捨てました。

Ｇ：は？！船、捨てた？！

Ｓ：いや、違います、ここにいます。救助を先導してます。

＜3回目？＞

Ｇ：もしもし、リヴォルノのデ・ファルコです。船長？お名前をお願いします。

Ｓ：こちら、船長。スケッティーノ。

Ｇ：では、スケッティーノ。船内に、身動き取れない人々がいます。即刻、アナタの乗っている救助船で船に戻り、船首側から船内にあがって下さい。そして、何名残っているかを報告して下さい。只今、こちらの会話を録音します。いいですね？船長。

＜しばらく沈黙＞

Ｓ：司令官、あのひとつ言ってもいいですか。

Ｇ：大きな声で！

Ｓ：えっと、司令官、現在、船は傾いています。

Ｇ：もっと大きな声で！マイクの前に手をかざして、話して！わかった？

Ｓ：えっと、司令官さん、船、傾いてるんですけど！

Ｇ：了解。よく聞いて下さい、人々は今、船首側から降りています。船長は、逆にそこを登って、船に上がって下さい。そして、何名残っているか、船内に何があるか報告して下さい。いいですね？女性、子供、アシスタントが必要な人がいるのなら、それぞれの人数を私に報告して下さい。わかった？

スケッティーノ、アナタ、海から助かったかもしれませんけど、私はただじゃおきませんよ。ふーねーに戻りなさいっ！

Ｓ：司令官、お願いします…。

Ｇ：お願いしますじゃないっ！さあ、戻りなさい。戻ると約束しなさい。

Ｓ：救助ボートに乗ってます。ここにいます。どこにも行きませんから、ここにいます。

Ｇ：そこで何やってるんですか、船長？

Ｓ：ここで、救助の先導してます。

Ｇ：そこで何を先導してるんですか？ふーねーに戻りなさいっ！戻って船から先導してっ！

＜沈黙・・・。デ・ファルコさん怒る。＞

Ｇ：拒否ですか？船長、船に戻るのを拒んでるんですか？その理由を私に云いたまえ！

Ｓ：ち、違います。拒否じゃありません。向かってます。ゴニョゴニョ…

Ｇ：船に戻りなさい！これは命令だっ！アナタ、船を捨てたと明確にしたんだから、今から、私が命令します。船に戻れ！わかったか？聞こえないの？

船から私に連絡しなさい。私の航空救助隊がそこにいます。

Ｓ：どこに救助隊がいるの？

Ｇ：船首に。すでに遺体がいくつかある。

Ｓ：え？いくつ？

Ｇ：未確認だ。あなたが私に報告するべきだろう、ったく！

＜震えながらこたえるスケッティーノ…。＞

Ｇ：司令官、真っ暗なんですよ…ここから何も見えません…。

＜デ・ファルコさん、さらに怒る。＞

Ｇ：なんだって？何したいんだ。家に帰りたいのか？とにかく、戻りなさい。船首から船に上がって、何ができるか、何人いるか、何が必要か、報告するんだ！

Ｓ：ここに、私の副船長がいます…。

Ｇ：はぁ？

Ｓ：ここに私の副船長がいます…。

Ｇ：じゃあ、二人であがって。副船長の名前は？

Ｓ：ディミトリ…ディミストリ・システィーニ…

Ｇ：アナタと副船長で、船に上がって、さあ！

Ｓ：司令官さん…船に上がりたいです。ここに別の救助ボートがあって、他の救助がいます。停まってて、漂流してるんです。今、他の救助を呼びました。

＜もう混乱して何言ってるか不明。＞

Ｇ：アナタ、1時間も前から同じこと言ってますよ！いいから、早く戻って、正確な人数を私に報告しなさいっ！

Ｓ：…わかりました。

港湾監督局のグレゴーリオ・デ・ファルコ氏は、「イタリアのヒーロー」になったそうです。フェイスブックのページもあり、称賛の嵐にご本人がコメント返ししているのだそうですが、何か、スタンドプレーぎみで変です。

もっとすごいのは船長フランチェスコ・スケッティーノ氏に早速弁護士が付いて、「座礁で傷ついた客船を浅瀬に誘導して沈没を逃れた。」と船長の行動を賞賛しています。

イタリアって少し変だと前から思っていました。ただ、「何かいいかげん」という性格？が似ているからか、実は好きなのです。