私の世界・知らない世界―ローマ期の剣闘士養成所、ウィーン郊外のカルヌントゥム遺跡
ネットのナショナルジオグラフィック・ニュースからです。
以前にも「巨大グラディエーター養成所跡を発見」と言う記事があり、一緒に載せておきます。
グラディエーター(剣闘士)は何しろ憧れ? というか、ギリシャ・ローマ時代の単純で野蛮な鈍器(余り斬れ無い剣や槍)や“素手”の戦いが、何か好きです。映画の「グラディエーター」や「スパルタカス」を見て、わくわくしている自分がいるのです。
カルヌントゥムの遺跡はウィーンの近郊です。
カルヌントゥムの遺跡も凄いのですが、圧巻は円形闘技場の原型が、今でも見られることです。
剣闘士養成所の姿が遺跡の発掘や地中構造を分析して分かったようです。
剣闘士養成所の図
ウィーン近郊で見つかった古代ローマの剣闘士養成学校をデジタルで再現
少し気になるのは、当時としては豊かな設備、訓練生活が貴族や金持ち達の出資で賄われ、その命懸けの戦いが見世物(娯楽)や賭けの対象になっていただろうことです。
カルヌントゥム(Carnuntum)
ローマ帝国の重要な軍駐屯地で、現在のオーストリアに位置した。もともとはノリクム属州にあったが、紀元1世紀以降はパンノニア属州となった。ウィーンとブラチスラヴァを結ぶ幹線道路の中間あたりに遺跡があり、今は「カルヌントゥム考古学公園」となっている。現在の行政区域で言えば、ニーダーエスターライヒ州のペトローネル=カルヌントゥムとバート・ドイチュ=アルテンブルクという村にまたがって広がっている。(=ウィキペディア)
『ローマ期の剣闘士養成所、ウィーン郊外
(February 27, 2014)
古代ローマの剣闘士たちはとりでに囲まれた刑務所のような場所で暮らし、訓練を積んでいたという。ある国際的な考古学者チームが剣闘士養成所の地図を作成し、当時の様子が明らかになった。
剣闘士の養成所が発見されたのはオーストリア、ウィーン郊外あるカルヌントゥムの遺跡。イタリアのローマ以外で発見されたのはこれが初めてだ。現在は牧場の下に埋まっているため、センサーを使って地中の構造を分析する技術で地図を作成した。
25日夜に「Antiquity」誌で発表された論文によって、かの有名な古代の戦士たちが2世紀のローマ帝国でどのような生活を送っていたかが明らかにされた。
研究チームを率いたウィーン大学の考古学者ウォルフガング・ノイバウアー(Wolfgang Neubauer)氏は、「養成所は刑務所で、彼らは囚人だった」と表現する。「外に通じる門が1つしかない砦(とりで)に閉じ込められ、独房のような部屋で暮らしていた」。
ノイバウアー氏は今回の発見について、剣闘士がローマ以外でも“大きなビジネス”だったことを示していると述べている。中庭に訓練場を配置した大きな2階建ての施設で、おそらく80人は下らない剣闘士たちが生活していた。冬の訓練で使用する床暖房や浴場、診療所、水道を完備し、建物の近くには墓地もあった。
◆ローマ帝国の囚人
ノイバウアー氏によれば、剣闘士はカルヌントゥムの町から離れた場所に住まわされており、大切な奴隷として扱われていたことは間違いないという。カルヌントゥムは西暦124年、ローマ皇帝ハドリアヌスによってドナウ川沿いに築かれ、後にローマ帝国の拠点となった。
剣闘士について研究しているハーバード大学のキャスリーン・コールマン(Kathleen Coleman)氏は第三者の立場で、「今回の発見によって、いてつくローマ帝国の最北端で剣闘士がどのような生活を送り、どのように訓練を積んでいたかが鮮明に見えてきた」と述べている。
ローマ帝国には剣闘士養成所が100以上あったが、知られている限りでは、その面影が残っているのはローマ、カルヌントゥム、イタリアに存在したポンペイ(ただし、小さな私有の訓練場)のみだ。カルヌントゥムの養成所は壁に囲まれた1万1000平方メートルの施設。剣闘士たちは近くの円形闘技場で戦いを披露するため、休むことなく訓練を積んでいた。
ノイバウアー氏は、「剣闘士が殺されることはめったになかった。彼らはそれだけ貴重な存在だった」と説明する。「円形闘技場では、戦いの訓練を受けていない多くの人が命を落としたようだ。虐殺も多かった。しかし、剣闘士同士の戦いはあくまで演技であり、殺し合うことはなかった」。
◆狭い個室
剣闘士たちは3平方メートルの小部屋を与えられ、1人または2人で眠っていた。マギステルと呼ばれる指導者の部屋はもっと大きく、別の区画にあった。マギステルも闘技会で生き残った元剣闘士で、それぞれが武器や格闘の専門を持っていた。
コールマン氏は、「首都(ローマ)の養成所とよく似ているため、この地方の剣闘士たちも同じような生活を送り、訓練を積んでいたのだろう」と推測している。施設にある唯一の門は、ローマ帝国第4の規模と言われる円形闘技場への道につながっている。
また、砦に囲まれた刑務所のような施設は、2000年に公開された映画「グラディエーター」で描かれていたイメージを覆すものだ。映画の中の剣闘士たちは町から町へと渡り歩き、サーカスのような舞台で戦いを披露していた。
「彼らはチームではなかった」とノイバウアー氏は話す。「自分の意思で生活し、訓練を積み、施設の中央に対戦相手が掲示されていた」。
ノイバウアー氏は地上からの調査による地図の作成を継続する予定だ。カルヌントゥムは驚くほど大きな町だったことがわかってきている。
また、ノイバウアー氏によれば、トルコのエフェソスにある剣闘士の墓から出てきた骨を分析した結果、ほとんど野菜ばかり食べでいたことが示されているという。ノイバウアー氏らもカルヌントゥムの墓に埋まっている骨を分析し、古代の戦士たちの日常生活をさらに探りたいと考えている。』
『巨大グラディエーター養成所跡を発見
(September 14, 2011)
オーストリアのウィーン近郊で、古代ローマの巨大な剣闘士養成学校の遺跡が見つかった。大規模な複合施設で、ローマのコロッセオ周辺の養成施設に匹敵する。
発見された遺跡は木製の訓練用ダミーの痕跡など、ローマの剣闘士養成学校(ラテン語でルードゥス)にはこれまで見られなかった特色がある。門の外で剣闘士の墓地が見つかったが、ルードゥスの構内にあるのは初めてだと調査チームは話している。
遺跡が発見されたカルヌントゥム考古学公園の科学主任であるフランツ・フーマー氏は、「私のキャリアで考えられる最も興味深いもののひとつだ」とも話している。
養成学校はおそらく、隣接する1万3000人収容の円形闘技場と同時に作られている。円形闘技場はマルクス・アウレリウスがローマ皇帝だった西暦150年ごろに建設されたもので、1920年代と1930年代に発掘された。
アウレリウス帝はカルヌントゥムに滞在したことがわかっており、その息子コンモドゥス(2000年の大作映画『グラディエーター』に同名の悪帝が登場)が剣闘士の試合を初めて見たのは、ここカルヌントゥムだった可能性がある。
中庭にはローマ版の外野席が完備された小型の円形闘技場があり、剣闘士はここで動きを練習することができた。大半が奴隷だった剣闘士たちは、買ってくれそうな人を求めてここで実演したのかもしれないとフーマー氏は推測する。
養成施設の隣には壁で囲われた敷地があった。これは剣闘士が戦う野生の動物を閉じ込める、あるいは馬を訓練するといった用途で使われていた可能性がある。これまでのルードゥスには認められなかった機能だとフーマー氏は話す。
面積は施設全体で1万9000平方メートルほどあるが、カルヌントゥムの剣闘士養成学校の中心的な建物群は、ローマとポンペイで発掘された従来の養成学校の遺跡と非常によく似ている。調査チームはこの類似性から、カルヌントゥムで見つかったものは、まだ発掘してはいないがまさしく剣闘士の養成学校だと確信している。』
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