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2021年1月14日 (木)

私の世界・知らない世界―『米議会襲撃 65日間の危険信号・・その③!?』

 ネットのBBC(bbc.com/japanese/)のニュースから、「米国大統領選挙の米議会襲撃に至る65日間・・」の話その③です。

<その③>

121日>

12月1日になるとスターリング氏は報道陣を前に、「何もかもやりすぎだ! 何もかも!」、「もうこれっきりにしなくてはならない」と語気を強めた。また、「誰かがけがをする、誰かが撃たれる、このままでは人が死ぬ」と声を震わせながら訴え、支持者による脅しや威圧をやめさせるようトランプ氏に呼びかけた。スターリング氏のこの警告は、先見の明あるものになってしまった。

・【米大統領選2020】 「このままでは人が死ぬ」 ジョージア州選管幹部が警告

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同様にバイデン氏が勝った激戦州ミシガンでは12月初め、ジョスリン・ベンソン州務長官(民主党)の自宅に、約30人のトランプ派が押し寄せた。

デトロイトに住むベンソン氏は4歳の息子と一緒に、クリスマス・ツリーの飾り付けを終えたところだった。

自宅の外には横断幕を手にしたトランプ氏の支持者たちが、メガホンを通じて「Stop the steal!」と叫び始めた。「ベンソン、お前は悪党だ」と叫んだ人もいた。

「お前は民主主義の脅威だ」と怒鳴るトランプ派もいた。

抗議に参加した1人はフェイスブックで一部始終を生中継し、自分たちは「どこにもいかない」と主張した。

選挙の実施に関わった州当局者を標的に、こうした抗議は各地で相次いだ。

ジョージア州ではラッフェンスパーガー州務長官の自宅前を、トランプ派の車列がクラクションを鳴らしながらひっきりなしに行きかった。長官夫人は性的暴力の脅しを受けた。

アリゾナ州ではケイティー・ホッブス州務長官(民主党)の自宅前にトランプ派が集まり、「お前を監視してるからな」などと脅した。

1211日>

12月11日になると、選挙結果を覆そうとするテキサス州政府の訴えを連邦最高裁が退けた。

トランプ大統領に残された法的・政治的な選択肢が次々と消えていくにつれ、ネット上ではトランプ派の主張が急激に激化し、暴力的になっていった。

12月12日には、ワシントンで2度目の「Stop the Steal」集会が開かれた。またしても数千人が集まり、またしても著名な極右活動家やQアノン支持者、過激なMAGA団体や私兵集団が参加した。

1212日には、ワシントンで2度目の「Stop the Steal」集会が開かれた

13

偽証罪などで有罪になった後、トランプ氏に恩赦されたマイケル・フリン元大統領補佐官は、集会の参加者たちを聖書の兵士や、旧約聖書で描かれるジェリコ(エリコ)の壁を突破した祭司になぞらえて鼓舞した。集会主催者たちが、選挙結果を覆すために「ジェリコの行進」をしようと呼びかけていたからだ。

極右団体グロイパースの指導者ニック・フエンテス氏は、「我々はGOP(共和党)をぶち壊す!」と群衆を駆り立てた。フエンテス氏らは以前から、自分たちが「穏健すぎる」とみなす共和党の政治家や関係者を標的にしてきた集団。

この日の行進も、衝突につながった。

1214日:イデン氏の勝利が確定>

この2日後の1214日には、各州に割り当てられた選挙人たちの投票で、バイデン氏の勝利が確定した。選挙人団の投票は、一般有権者が投票する大統領選で勝った候補が、正式に就任するための手続き。

オンラインの各種プラットフォームでは、法的手段はすべて行き止まりで、トランプ大統領の再選を救うには直接行動しかないという認識が、広がりつつあった。

選挙当日以降、フリン氏やパウエル弁護士、ウッド弁護士のほか、オンラインのトランプ派の間で急速に注目されるようになったのが、ロン・ワトキンス氏だった。

暴力的で性的な過激表現が大量に書き込まれるオンライン掲示板「8chan」や「8kun」を立ち上げたのが、ジム・ワトキンス氏。ロン氏はその息子だ。「8chan」や「8kun」は、Qアノン運動が台頭した場でもある。

ロン・ワトキンス氏は1217日にツイートを連投し、トランプ大統領が古代ローマのユリウス・カエサルを手本にすべきだと主張。「軍の強烈な忠誠」を利用して、「共和国を復活」させるべきだと力説した。

・ツイート、「共和国を復活」

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50万人以上のフォロワーに向かってロン・ワトキンス氏は、「#CrossTheRubicon(ルビコンを渡れ)」をトレンド入りさせるよう呼びかけた。これは紀元前49年にユリウス・カエサルが兵を引いてルビコン川を渡り、共和政ローマに対する内戦を引き起こしたことを念頭にしたもの。このハッシュタグは保守主流派にも広まり、アリゾナ州共和党のケリ・ワード委員長も使用した。

ロン・ワトキンス氏はさらに別のツイートで、トランプ氏は「Insurrection Act(反乱法)」を発動しなくてはならないと主張した。1807年制定のこの法律は、内乱鎮圧などのため国内で米軍などを出動させる権限を大統領に与えている。

ワトキンス氏のツイート連投の翌日、18日にトランプ大統領はホワイトハウスで、パウエル弁護士やフリン氏などを集めて、作戦会議を開いた。

米紙ニューヨーク・タイムズによると、この席でフリン氏はトランプ氏に、戒厳令を発令し、大統領選を「やり直す」ために軍を投入するよう呼びかけた。

極右勢力の間では、ホワイトハウスでのこの協議を燃料に、さらに「戦争」や「革命」についての書き込みが相次いだ。大統領選の後の16日に開かれることが憲法で決まっている連邦議会の上下両院合同会議は、通常は大統領の当選を認定する儀礼的な手続きに過ぎない。しかし、トランプ派の間ではこれこそが最後のチャンスだという見方が広まった。

Qアノン信奉者や一部のMAGA支持者の間では、希望的観測にもとづく物語が徐々に出来上がっていった。16日の投票認定手続きを進行するのは上院議長でもある副大統領の役目なので、マイク・ペンス副大統領が選挙人団の投票を拒否して、トランプ氏の当選を認定するものという期待が、高まっていったのだ。

その後にもし国内に混乱が起きれば大統領が軍を出動させて鎮圧するし、大掛かりな不正選挙を仕組んだ「ディープステイト・カバル」(カバルは「一派」などの意味)の一斉逮捕を命じ、一網打尽してグアンタナモ軍刑務所にごっそり送り込む――というのが、トランプ派が思い描いた展開だった。

しかし、現実世界に戻れば、このようなことがあり得るはずはまったくなかった。それでも、支持者たちは自動車を乗り合う「愛国者キャラバン」を全国的に結成して、大挙してワシントンへ向かう計画を立てた。

・ワシントンへ向かう

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トランプ氏を支持する旗を立てた車や、時には派手に飾り立てたトレーラーが車列を作り、ケンタッキー州ルイヴィルやジョージア州アトランタ、ペンシルヴェニア州スクラントンなどの巨大駐車場に集まった。

20人の仲間と共に写真に収まり、「みんなでこれから向かうよ」とツイートした参加者もいた。

ノースカロライナ州にあるイケアの駐車場では、別の男性が自分のトラックを自慢していた。「旗は少しくたびれているが、今では戦闘の旗と呼んでいるんだ」と、この男性は話した。

しかし、ペンス氏を初めとする共和党幹部は、憲法に従い、議会としてバイデン氏の勝利を認定するようだと、次第に明らかになる。すると、トランプ派がペンス氏たちに浴びせる罵詈雑言は残酷なものになり、激化した。

「ペンスは刑務所に入り、反逆罪の裁判を待つことになる」と、ウッド弁護士はツイートした。「銃殺刑に処せられる」とも書いた。

オンライン投稿は沸点に達した。「表現の自由」の場を自認し、トランプ派に人気の「パーラー」や「Gab」などのソーシャルメディアでは、武器や戦争や暴力に関する書き込みが大量に続いた。

「プラウド・ボーイズ」たちのグループは、かつては警察を支持していたが、もはや警察は自分たちの敵だと認定して対立を呼びかける投稿もあった。

トランプ派に人気のサイト「ザ・ドナルド」では何百もの投稿が、どうやって警察の制止線を越えるか、銃規制の厳しいワシントンでどうやって銃など武器を携えて行進するか、大勢が公然と話し合っていた。

連邦議会の議事堂を襲撃して、「反逆的」な連邦議員たちを逮捕する方法についての相談も、しきりに行われていた。

16日:議会で開票>

1月6日の水曜日、トランプ氏はホワイトハウスのすぐ南にあるエリプス公園で、数千人を前に1時間以上演説した。

最初のうちは支持者たちに「平和的に、そして愛国的に、主張するように」と呼びかけていた。しかしトランプ氏は演説をこう締めくくった。「必死になってとことん戦うぞ。必死になって戦わなければ、みんなの国はもうなくなってしまう」。

「だからみんなして、みんなでペンシルヴェニア通りを歩いて(略)連邦議会に向かうぞ」

・トランプ氏支持者たちが米議事堂に侵入する瞬

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1月6日が暴力の日になるのは最初から明らかだったと、そういう人もいる。

ジョージ・W・ブッシュ元大統領の下で国土安全保障長官だったマイケル・チャートフ氏は、議会警察を批判する。州兵を大勢配備してはどうかという事前の呼びかけを、議会警察は断っていたと報道されている。

「警察組織によるあれほどの失態は見たことがない」と、チャートフ氏は言う。「まずいことになると、かなり事前に予想できていた事態だと思う」。

「率直に言って、火を見るより明らかだった。新聞を読んで、目が覚めていれば。不正選挙があったと信じ込んでいる人が大勢いると、分かっていたはずだ。その中には過激主義者がいて、暴力も辞さないと。『銃を持参しろ』と、堂々と呼びかけていたグループもあったのだから」

・暴力の日

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それでも、多くのアメリカ人が6日の光景に衝撃を受けた。ヴァージニア州在住の共和党支持者、ジェイムズ・クラークさん(68)もその1人だ。

「まったく衝撃的だった。まさかあんなことになるとは」と、クラークさんはBBCに話した。

しかし、予兆はもう何週間も前から出ていた。様々な過激主義者や陰謀論者たちが、選挙が盗まれてしまったと確信し、オンラインで相談し合っていたのだ。どうやって武装するか。そして暴力について。

捜査当局はもしかすると、こうした投稿は捜査に値するほど深刻ではない、あるいは具体的ではないと思ったのかもしれない。今となっては厳しい批判を受け、説明を求められている。

・米連邦議会襲撃 参加者たちが撮影した内部の様子

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バイデン次期大統領は120日に就任する。6日に比べて警備は「はるかに増強される」だろうと、チャートフ氏は言う。

それでも、ウェブ上の様々なソーシャルメディアやプラットフォームでは、6日以上に激しい暴力や妨害を呼びかける書き込みが続いている。

数百万、数千万もの人に陰謀論が拡散する原因となった、主要ソーシャルメディア各社に対しても、批判と説明責任を求める声が高まっている。

ツイッター社は8日夜、フリン元大統領補佐官と「クラーケン」弁護士のパウエル氏とウッド氏、そしてワトキンス氏らのアカウントを削除。そしてついにはトランプ氏自身のアカウントを永久凍結した(訳注:同社はさらに8日から12日までの間に、Qアノン関連の投稿ばかり繰り返す7万件以上のアカウントを凍結した)。

議事堂を襲撃した実行犯たちの逮捕と起訴も続いている。しかし、暴徒のほとんどはいまだにオンラインで現実とは乖離(かいり)した平行宇宙に生きている。そこは「代替の事実」(かつてトランプ大統領の側近だったケリアン・コンウェイ氏が使った表現)にあふれる、薄暗い地下の世界だ。

トランプ氏は暴動の翌日に初めて、「120日には新しい政権が就任する」と認めるビデオを公表した。しかしそれについても、支持者たちは曲解に曲解を重ねている。

諦めたはずがないと。たとえば、あれは本人ではなく、コンピューターが作り出した「ディープフェイク」に違いないと。あるいは、もしかして大統領は捕らえられていて、あれはいわゆる「人質ビデオ」なのではないか、など(訳注:トランプ氏は12日、テキサス州で演説し、議会襲撃前の自分の演説に何も問題はなかったと主張している)。

トランプ氏は最終的に勝つはずだと、まだ信じている人が大勢いる。

根拠となる裏づけはない。しかし、明らかなことがひとつある。

ドナルド・トランプ氏本人がどうなろうと、米連邦議会の議事堂を襲撃した暴徒たちは、そう簡単には引き下がらない。

(追加取材:オルガ・ロビンソン、ジェイク・ホートン)

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