システム科学

2024年5月20日 (月)

私の世界・知らない世界―『インドで急速に普及する電子決済システム・・で、日本では・・!?』

 ネットのCNNのニュースとジェトロのビジネス短信から、インドで急速に普及している電子決済システム・UPIの話です。

 金融包摂(Financial inclusion)という言葉というか、考え方を知りませんでした。

 日本政府がデジタル庁まで作って、デジタル化を進めようしているのに、なかなか進まない意味が分かる気がします。

 既に日本では、ほとんどの人に、郵便局や銀行、保険会社、各種組合、農協などによって、サービスが行き届いているのです。

 何か、行き届いたこれまでの金融包摂を、逆に「壊そうとしているのではないか?」という感じがするのですが・・。

金融包摂:金融サービスにアクセスする機会が十分、平等にあること。個人や企業が、銀行、ローン、株式、保険商品などを含む、適切かつ手頃な価格でタイムリーな金融商品やサービスにアクセスできるプロセスのこと・・(英語のウィキより)

『民族衣装から屋台料理まで インドで急速に普及する電子決済システム

2024.05.19 Sun posted at 17:30 JST

・オールドデリーにある、ブリジ・キショア・アガルワルさんが経営するサリーの販売店/Sania Farooqui/CNN

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香港/ニューデリー(CNN) インドの旧市街地区オールドデリーのチャンドニーチョーク市場近くに、ブリジ・キショア・アガルワルさん(79)が経営する民族衣装サリーの店がある。かつては、この店を訪れた家族連れが、鮮やかな刺繍(ししゅう)が施された大きな衣服の束を現金で支払い、店を出ていく姿は日常の光景だった。

アガルワルさんは、何者かが店に侵入して銀行に預金する前の現金を盗むのではないかという不安に駆られ、夜は眠れなかった。だが最近では、ほとんどの顧客が電子決済を利用して支払いを済ませるため、安心して眠れるようになったという。

約65年にわたりこの店で働くアガルワルさんは「この国が変わっていくのを目の当たりにしてきた。現金決済は稀(まれ)だ」と語る。

ユーザーがQRコードをスキャンするだけで即時送金が可能な「統合決済インターフェース(UPI)」などのシステムを通じて行われるデジタル決済は、世界で最も人口の多いインドで広く普及し、日常生活を一変させた。

デリーでは、茶売りがモバイルアプリで集金し、熱々のパニールパラタ(チーズ入りの薄焼きパン)を購入しようと車を止めたトゥクトゥクの運転手が携帯電話で支払いを済ませる。

電子決済が起こす革命は、経済大国を目指すインドにおいても重要な役割を果たすだろう。世界第5位の経済大国であるインドでは、モディ首相が2047年までにインドを「先進国」入りさせることを目指している。

米コーネル大学の経済学教授、エスワル・プラサド氏はCNNに対し、「デジタル決済は摩擦をなくし、効率を高め、コストを削減することで、インドの成長を促進する可能性が高い」と述べたうえで、「UPIと経済の広範な電子化は、成長の包括性も高め得る」と話した。

・ほとんどの顧客が電子決済を利用して支払いを済ませるという/Sania Farooqui/CNN

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〇インドのデジタル化

インドは約15年前からデジタル化に向けた取り組みを開始したが、電子決済はなかなか普及しなかった。16年時点で、インドにおける取引の96%は依然として紙幣で行われていた。

だが同年に起きた二つの出来事により状況は一変した。まず、インド準備銀行(中央銀行)と銀行協会が主導する非営利団体のインド決済公社(NPCI) が決済インフラUPIを導入した。

UPIを利用すれば、ユーザーは携帯電話を仮想デビットカードとして使用でき、銀行情報を入力したり、取引手数料を支払ったりすることなく、約600の加盟銀行やフィンテック企業から即時に送金できる。

・電子決済が使えるタオルの販売店/Sania Farooqui/CNN

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さらに、インド政府は同年、汚職撲滅を目的として、流通通貨全体の86%を占めていた2種類の高額紙幣を突如として廃止した。これにより電子決済の利用が急増することになった。

デリーのサロジニ・ナガー市場でタオル店を営むラメシュ・クマールさん(52)は「他に選択肢がなかった」として、16年にデジタル決済の受け入れを始めた。

また新型コロナウイルスにより、人々がウイルスから身を守ろうとするなか、デジタル決済の普及はさらに加速した。

インドでは現在、野菜売りから医者まであらゆる人が支払いにUPIを利用している。政府によれば、インドのデジタル決済率は世界トップで、23年にはUPIの取引件数が1000億件を超えた。

一方で電子決済に乗り気でない人たちもいる。オールドデリー在住の人力車運転手、アジーズさん(34)はCNNに対し、お金を失うのが怖くて電子決済は使えないと語った。

「私は教育を受けていない。貧しく、学校に行ったこともなく、読み書きもできない。間違えたらどうなるのか?」

・人力車運転手のアジーズさんは現金だけを扱っている/Sania Farooqui/CNN

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それでも電子決済は増加傾向が続き、公式な経済に流入する資金の数と金額をさらに押し上げると予想されている。UPIは30年までに1日当たり20億件の決済取引が行われることを目指している。

「私、そして古くからある私の店がこのように前進して変化できるのなら、ほかのすべての買い手や客もできるはずだ」とサリー販売店を営むアガルワルさんは言う。

〇「インドの経済成長を支える」

インドは世界で最も急成長している主要経済国であり、デジタル化は「インドの非常に成功した経済軌道において、かなり重要な役割を果たしてきた」とプラサド氏は指摘する。

UPIの導入がインドの国内総生産(GDP)に与えた影響を定量化することは難しいが、ミクロレベルで見ると、UPIがもたらした変化を確認するのは容易だ。アガルワルさんによれば、UPIよってビジネスの効率と透明性が向上し、納税申告が簡単になったという。

オールドデリーの寺院の外で、わずか0.12ドル(約19円)で花を売るカピル・シャルマさん(42)は、かつては見込み客がおつりを待つのを嫌がったため、商売の機会を逃していたとCNNに語っている。シャルマさんは1年ほど前にUPIを使い始め、売り上げが増加した。

客は「買って、支払って、去っていく」ため、決済が以前よりもシンプルになったという。

・花を売るカピル・シャルマさん/Sania Farooqui/CNN

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インドはデジタル公共インフラの導入によって、金融包摂率が80%に達した。格差は依然として問題だが、プラサド氏は、デジタル化により「インド国民は、それほど裕福でない大衆も含めて、インドの経済成長と変革に自分たちが関わっていると感じられるようになった」と話す。

NPCIは現在、海外で働く国民が本国インドへの送金を簡単にしたり、インド人旅行者がUPIを利用して支払いができるようにしたりするため、海外展開に力を入れている。今年、パリのエッフェル塔のウェブサイトはUPIによる支払いの受け入れを開始した。

「政府はUPIを世界のひな形とみなしていると考える。UPIは間違いなく世界におけるインドの地位向上に役立つと思う」とプラサド氏は指摘した。

UPIが将来的にインド国外に及ぼす影響は別として、その恩恵をすでに受けている人々からは草の根的に高い支持を得ているようだ。これはインド国内におけるUPIの優位性がさらに高まる可能性が高いことを意味している。

アガルワルさんも「現金決済に戻るという選択肢が与えられたとしても、私は興味がないと答える」と述べている。

『インドの電子決済システム(UPI)、スリランカとモーリシャスでも利用可能に

20240215日)

インド準備銀行(RBI、中央銀行)は212日、インド政府が主導する電子決済システムUPI(統合決済インターフェース)がスリランカとモーリシャスでも利用可能になったと発表した。スリランカ、モーリシャスに渡航するインド在住者は今後、UPIの個人IDをインド国内銀行口座とひもづけていれば、両国内の店舗でもUPIを使用してクロスボーダー決済ができるようになるという。UPIはインドの電子決済プラットフォームで、店舗などでの支払いに際し、QRコードや仮想支払いアドレス(VPA)を使い、スマートフォンなどでデジタル決済を行うことができるものだ(2023725日記事参照)。

モーリシャスからインドへの渡航者も同様に、モーリシャスの即時決済システム(IPS)アプリを使用したインド国内店舗でのデジタル決済ができるようになる。また、RBIはこの発表の中で、インド決済公社(NPCI)が管理するカード決済用ブランド「RuPay(ルペイ)」のカードについても、今後モーリシャス国内の市中銀行での発行も開始することも明らかにした。

インドのナレンドラ・モディ首相は同日、スリランカのラニル・ウィクラマシンハ大統領、モーリシャスのプラビン・クマール・ジャグナット首相とともにオンラインで参加した開始記念式典で、UPI2023年に年間1,000億回以上使われ、決済総額は計2兆ルピー(約36,000億円、1ルピー=約1.8円)に上る巨大な電子決済プラットフォームだと紹介。近い将来、各国店舗でのクロスボーダー決済だけでなく、個人間の国外送金でも利用ができるように環境を整備していきたいとした。

NPCIによると、インド国外でのUPI利用は現在、シンガポール(2021922日記事参照)、アラブ首長国連邦(UAE)、ブータンのほか、Eコマースに限ってフランスでも可能だ。一方、インドの「RuPay」ブランドのカードは、ネパール、ブータン、シンガポール、UAEでも発行されている。』(独立行政法人日本貿易振興機構(ジェトロ)【Japan External Trade Organization(JETRO)】ビジネス短信:広木拓、サンディープ・シン

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2024年3月27日 (水)

私の世界・知らない世界―『大型船との衝突で橋崩落、米ボルティモア・・のマリーントラフィック(MarineTraffic)!?』

 ネットのAFPのニュースから、「大型船との衝突で橋崩落・・」という326日の記事からです。

・パタプスコ川に架かるフランシス・スコット・キー橋と衝突した船。米メリーランド州ボルティモアで。動画からの静止画(2024326日撮影)。(c)BRENDAN SMIALOWSKI / CBS / AFP

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・パタプスコ川に架かるフランシス・スコット・キー橋。米メリーランド州ボルティモアで(20211014日撮影、資料写真)。(c)Brendan Smialowski / AFP)

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 ・・で、その場所をマップで見たものです。

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 “マリーントラフィック(MarineTraffic)”は以前紹介したことがあり、以下のサイトで、船名を入力すると位置情報を検索する事が出来ます。

https://www.marinetraffic.com/en/ais/home/centerx:123.556/centery:25.160/zoom:12

 船名“Dali”で検索して得た位置情報の画像です。

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 船舶の難破や衝突防止、テロ対策に利用すれば、色々役に立つように思えるものです。

『大型船との衝突で橋崩落、20人落下の恐れ 米ボルティモア

2024326 19:33 発信地:ワシントンD.C./米国)

326 AFP】米メリーランド(Maryland)州ボルティモア(Baltimore)で26日未明、大型船が橋に衝突し、橋が崩落する事故が起きた。20人が川に落ちた恐れがあり、救助活動が行われている。米メディアが伝えた。

 事故は、午前1時半(日本時間同日午後2時半)ごろ、パタプスコ(Patapsco)川に架かる「フランシス・スコット・キー橋(Francis Scott Key Bridge)」で起きた。現地消防当局は米CNNに対し、最大で20人が川に落ちた恐れがあるとし、車両も複数落下したとみられると話した。

 事故の発生を受け、メリーランド州交通当局は、双方向の全ての車線が通行止めになっているとX(旧ツイッター)で伝えた。

 監視カメラが捉えた映像には、コンテナ船とみられる船が橋脚に衝突し、橋が崩れ落ちる様子が捉えられていた。

 船舶の位置などに関する情報をリアルタイムで提供するウェブサイト「マリーントラフィック(MarineTraffic)」は、シンガポール船籍の貨物船「ダリ(Dali)」が、26日早朝に橋の下で止まったとしている。

 全長約2.6キロのフランシス・スコット・キー橋は、1977年に開通した。(c)AFP

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2023年6月 8日 (木)

騙されてはいけない1652―今起こっている福島原発事故・「多核種除去設備等処理水の海洋放出に向けた海域モニタリングにおける魚のトリチウム分析値の検証・・自分がするものか!?」

 東電のHPにあるニュースリリースの参考資料202365日「福島第一原子力発電所 多核種除去設備等処理水の海洋放出に向けた海域モニタリングにおける魚のトリチウム分析値の検証結果について」からです。

 東電はわざとではないか?と思うほど言い訳がましく「魚のトリチウム分析値の検証」を、何かごちゃごちゃと報告していますが、分かったことは将来海洋放出に向けた海域モニタリング自分のところで分析するつもりのようです。

 一番良い検証方法は、反対している人達や他国(中国や韓国など)に分析を任せればよいことです。

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2023年4月27日 (木)

私の世界・面白い話のネタ―「「滞納者が偽善ぶって」「相当がめつい」 市職員が個人情報あざける・・で、あんたもちゃうの・・!?」

 ネットの朝日新聞デジタルの記事から、「岩手県釜石市の情報漏洩の問題」についての話です。

・情報開示されたやりとりの一部・住民票で調べた市民の家族構成についてのやりとりの一部・釜石市役所の本庁舎(朝日新聞デジタルより)

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 「市の職員が市民全員の個人情報を漏洩させた・・」が問題の本質ではありません。

 何度もいっているように、情報化社会は「便利さ」を提供するとともに必ず「疎ましい問題」をも発生・流布させます。システム化の時に必ず配慮し、回避策を講じなければならないものです。

 それと朝日新聞が、どこかの下品なユウチュウバーと同じに、『「滞納者が偽善ぶって」「相当がめつい」 市職員が個人情報あざける・・』というお題と、「この記事は有料記事です。残り1270文字有料会員になると続きをお読みいただけます。」は嫌な感じに思うのです。

 

『「滞納者が偽善ぶって」「相当がめつい」 市職員が個人情報あざける

2023425 800分 )

 岩手県釜石市の職員が市民全員の個人情報を自宅に持ち帰るなどして漏洩(ろうえい)させていたとして、市の調査委員会は今年3月下旬、内部調査の結果と再発防止策を報告書にまとめ、野田武則市長に提出した。朝日新聞は情報開示請求で、その調査過程の資料を入手した。漏洩に関与した3人のメールのやりとりなどが記載されており、興味本位で個人情報を調べては知人らを揶揄(やゆ)していた様子が浮かび上がった。

 「ちゃっかり減免申請も出してるよ」

 「相当がめついですね。セコイ手使って」

 市職員2人が、知人が保育料の減免申請をしている情報を不正に入手し、こんなやりとりをしていた。

 知人の滞納者情報を盗み見た際も、話題にする。

 「滞納者が偽善ぶってんじゃねぇよって、イラッとした」

 「滞納しているくせに偉そうに」

 こうした業務と無関係な会話が、不正に入手した情報をもとに、市のパソコンを使ってメールやチャットで行われていた。1日に200通以上交わされた日もあったという。

この情報漏洩の問題は昨年5

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2023年3月 9日 (木)

私の世界・面白い話のネタ―ネコ物語・『“ネコ火曜日”の意味をチャットGPTで調べたら?・・のネコ!?』

ロシアの生活情報サイト“yaplakal”(“Яплакал”)に“Котовторниковское”:「ネコ火曜日 」という投稿がよく出て来ます。

 “Котовторниковское”はそのままだと訳せないのですがネコのКотоと火曜日のвторниковскоеを合成したもの、「ネコ火曜日」又は「火曜日ネコ」です。何故ネコが火曜日なのか意味不明です。

 試しに、CHATGPTで聞いてみました。

<質問>

ロシア語のКотовторникはネコ火曜日と訳せますが、ロシアでは猫と火曜日はどのような関係、もしくは意味ですか

<回答>

ロシア語の「Котовторник (Kotovtornik)」という単語は、「ネコ火曜日」という意味があります。しかし、この言葉には明確な文化的な背景があります。

ロシアの民間伝承には、猫が火曜日に特別な役割を持っているという信念があります。火曜日は一般的に不吉な日とされており、猫はその不吉な日を避けることができるとされています。また、猫は病気や災難を回避する力を持っていると信じられています。

そのため、ロシアでは火曜日に猫を特別扱いするようになりました。猫にはご馳走を与えたり、特別なケアを施したりすることがあります。また、「Котовторник (Kotovtornik)」という言葉は、猫を祝う火曜日として広く知られています。

総じて、ロシアでは「Котовторник (Kotovtornik)」は、猫を祝う火曜日として特別な意味を持っています。

 

 何か凄い!というか、これまでの“喉のつっかえ”が取れた感じです。

CHATGPTの公式サイトは、検索してウィキの後ろにあるものを使うと良いと思います。

グーグルなどのアカウントを持っていればそのメールアドレスとパスワード入力でOKです。

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2021年11月24日 (水)

私の世界・知らない世界―「4つの気候変動否定論に対するファクトチェック・・!?」

 ネットのBBCニュース【解説】から、以下の4つの気候変動否定論に対する反論、ファクトチェックです。

 1.「太陽の極小期」が温暖化を止める。

 2.温暖化は良いこと。

 3. 気候変動対策で貧困が起こる

 4. 再生可能エネルギーは危険で信頼できない。

・英グラスゴーで開催された国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)で各国首脳が気候変動対策を協議する中、ソーシャルメディアでは気候変動に関する偽の主張や誤情報が拡散していた。

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 私的な意見をいうと、全てを再生可能エネルギーは無理で、ある程度まで?と思います。それに、先進国の既得権益の問題を解決するには、開発途上国への身を切る支援が出来るかどうかです。

 それと、どこの国が最も努力しなければならないか?は明白です。

・「ここが知りたい地球温暖化」:国立環境研究所・地球環境研究センターより

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 また、貧困問題はショック・ドクトリン、この危機を利用して火事場泥棒的に儲けようとするヤカラをどれだけ抑えることが出来るか?です。

『【解説】 気候変動否定論に変化? 誤情報をファクトチェック

20211123日:レイチェル・シュレア、ケイリーン・デヴリン、BBCリアリティーチェック)

科学者によると、気候変動否定論は現在、気候変動の現象そのものを完全に否定するものから、地球温暖化の原因や影響、それらへの対策を否定する方向に転換しているという。

この1年間、ソーシャルメディアなどで特に拡散した間違った主張を取り上げ、実際の証拠と照らし合わせてみる。

 <1.「太陽の極小期」が温暖化を止める>

20世紀の地球の気温の変化は人間の活動ではなく、地球の自然な周期によるものだという間違った主張は、これまでも多くの人が繰り返してきた。

しかしここ数カ月、この点をめぐって新しい議論が出てきている。

ソーシャルメディアではここ1年、「Grand Solar Minimum(太陽の極小期)」と呼ばれる現象によって、人間が介入するまでもなく自然に地球の気温が下がるという主張が何千件と投稿されている。

しかし、これは証拠が示している事柄とは異なっている。

極小期は、太陽の活動周期の中でエネルギーが弱くなる現象で、実際に起こっているものだ。

研究によると、太陽は21世紀中に弱い周期に入る可能性がある。しかし、これによる気温変化は、最大でも摂氏0.10.2度ほどの低下にとどまるという。

これは、人間の活動による温暖化を相殺するには足りない。人類は過去200年で地球の気温を1.2度ほど上昇させており、21世紀中に2.4度まで達する可能性もある。

また、気温上昇は大気のうち地球に最も近い層で起きている一方、太陽に近い成層圏では気温が下がっている。このことからも、近年の温暖化が太陽の活動周期によるものではないことが分かっている。

大気の熱は通常ならば成層圏に放出されるが、人間が燃料を燃やすことで発生する二酸化炭素などの温室効果ガスによって、現在はそれが閉じ込められている。

もし地球の温暖化の原因が太陽だというなら、大気全体が同時に温まる(あるいは冷える)はずだ。

 <2.温暖化は良いこと>

インターネット上には、温暖化によってむしろ地球上に人間の住める場所が増えた、温暖化よりも気温低下の方が多くの人が死ぬ――といった投稿が数多く出回っている。

こうした主張の多くは、都合のいい事実だけを取り上げ、自分の主張を否定する事実は無視する。

たとえば、これまで人が住めないほど寒かった地域は確かに、温暖化によって住みやすくなっているかもしれない。

しかし一方で、同じ地域に豪雨が起きるようになり、生活や農業の環境に影響を与えるかもしれない。さらには世界で最も海抜の低いモルディヴなど、温暖化や海面上昇によって人が住めなく地域も出てくる。

また、確かに温暖化によって寒波などによる死者は減るだろう。20002019年に寒さによって亡くなった人は、熱中症などによる死者よりも多かったという研究もある。

しかし、温暖化に伴う酷暑による死者が増えて、この差も相殺されてしますとみられている。

国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、「人の健康と生活に関わる気候リスクは(中略)、1.5度の気温上昇で加速すると予想される」と指摘している。一部地域で寒い日が少なくなるという小さな利益は、より頻繁に起こる熱波のリスクに打ち消される見通しだ

 <3. 気候変動対策で貧困が起こる>

気候変動対策への反論として、化石燃料は経済成長に必要だという主張がある。

この主張は、化石燃料の使用を抑制すれば経済成長も抑制されてしまい、生活費が上がり、貧困層が苦しむことになる……と続く。

しかし、この主張は全体像をとらえていない。

確かに化石燃料は自動車や工場、技術を動かし、20世紀の人類がこれまでにない規模とスピードで物事を進める原動力となった。

しかし、石炭の使用をやめるからといって、ウシに車を引かせたり、手でレバーをぐるぐる回して機械を動かしたりする時代に戻るわけではない。我々はすでに、同じような働きをする別の技術を手に入れている。

多くの地域で、風力や太陽光を使った再生可能エネルギーによる電力価格が、火力発電の電力価格を下回っている。

一方で、2050年までに気候変動対策を取らなかった場合、自然災害や異常な気温が建物や人々の生活、ビジネス、食糧供給などに与える損害によって、世界経済が18%縮小する可能性があるという研究が出ている。

こうしたダメージこそ、世界中の貧困層に誰よりも大打撃を与えるだろう。

 <4. 再生可能エネルギーは危険で信頼できない>

米テキサス州では今年初め、電力網の障害により大規模停電が起き、多くの住民が暗闇と寒さに直面した。この時、再生可能エネルギーの失敗が停電を引き起こしたという誤情報が拡散された。

停電の原因が風力発電のタービンだという間違った主張は、アメリカの保守系メディアも数多く取り上げた。

英ダラム・エネルギー研究所のジョン・グルヤス所長は、「停電は、粗末な発電供給管理の結果だ」と指摘する。

また、停電の原因は再生可能エネルギーだという主張は「筋が通っていない(中略)たとえばヴェネズエラは大量に石油を使っているのに停電が頻繁に起こっている」と述べた。

英シンクタンク「戦略対話研究所(ISD)」のジェニー・キング氏によると、「石油とガスへの依存、ならびに石油とガスへの補助金に依存する体制を守りたい人たちが、再生可能エネルギーをなにより攻撃している」。

再生可能エネルギー反対派は、この技術が鳥やコウモリを殺しているという主張もする。しかしこれは、化石燃料による発電所の方が何倍もの動物を死に追いやるだろうという研究結果を無視している。

鳥類を含む一部の野生動物が、風力発電のタービンによって死んでいるのは確かだろう。

しかし、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)の気候変動・環境研究所は、「自然保護団体は、気候変動を抑えることによる野生動物への利益は(中略)慎重な立地など正しく計画された安全策を講じることで、風力発電のリスクを上回るとみている」と述べて。』

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2021年10月24日 (日)

私の世界ー人との出会い・「システム科学の先達の人々」(リメイク)

<その①八杉理事長>

私の本業の1つはコンピュータ・プログラムの作成です。それは、40年以上も前に京都コンピュータ・センターというコンピュータ・プログラムの専門学校に入って学んだことに始まります。そのまま京都コンピュータ・センターのシステム開発部に就職したことが契機となりました。

そこに理事長の八杉正文さんが居ました。八杉さんは京都市の助役や交通局長をやった後、自由民主党・民社党が推薦して市長選に出馬します。社会党・共産党の推す富井市長と戦いますが、当時の京都は蜷川虎三府知事が居て、革新色が強く、夢―破れてしまったのです。

その後、京都産業大学法学部の行政学の教授となります。

大学を退官してから京都の政・経済界の協力を得て、京都コンピュータ・センターを作るのです。情報工学の単科大学にしたいと話していました。

印象に残っているのは、理事長室にルノワールの絵画らしきもの?が飾ってあるのですが、若い研究員を呼んで、

「私は君たちのような芸術品??の将来に賭けているんだ。それに比べるとこんな絵画〔ルノワールの絵?のこと〕なんか1つも惜しくない。いつでも売って君たちの為に使おうと思っているんだ。」

と話してくれました。

入社した年のクリスマスの前の日、八杉さんが僕と大橋さんを理事長室に呼ぶのです。

「何を、怒られるのやろか?・・」

とビビッて理事長室に入ると、ニコニコした八杉さんが居ました。

「今日は、クリスマスイブだよ!君たちもたまには祇園で飲んで来なさい。」

とパーティー券を二枚差し出すのです。

「その代わり、券だけにしなさいよ。絶対お代わりしてはいけません。祇園のクラブはものすごく高いお金を請求されますから!」

と言ってくれました。

八杉さんは、当時、泉さんという通産上がりのおじいさんに、社団法人の申請を依頼していました。多分、それが上手く行きそうなので嬉しくて、僕らにもそのおすそ分けをしてくれたようなのです。

ただ残念なことに、その夜、交通事故で亡くなられたのを次の日に知りました。なんとも無残というか、「そんな、僕らのことを気遣うような、珍しいことをするからや?・・」と泣きました。

<その②泉さん>

泉さんは役所上がりのおじいさんで、社団法人化の申請事務をするために事務所に来ていた人です。詳しい経歴は聞けなかったので、通産省のOBくらいにしか思っていませんでした。

あるとき、当時の世間知らずの私でも大物と知っている、稲葉秀三さん本人が事務所に尋ねて来る事があって驚いたのです。もっと驚いたのは、稲葉さんと泉さんが親しげに話していて、心を許した部下か同僚のような関係に見えたのです。つまり、泉さんも「一廉の大物」だったのです。

 

泉さんはいつもパイプ煙草をくゆらせていました。申請事務をする傍ら、孫が遊んでいるのを眺めるような目で、私たちの仕事ぶりを眺めていました。その煙草の煙の匂いは、甘酸っぱくて気持ち良いものです。

「そうだ、僕もパイプやろ!?・・」

と泉さんを真似てパイプ煙草を始めたのです。

やってみると意外な効果に気が付くのです。「暇が持余せる?・・」のです。システム開発部の仕事は、役所の仕事が主ですから期末の4月前後が死ぬほ

どいそがしいのですが、夏と秋は暇なのです。

システム開発部以外の人は、教育(コンピュータ学校)の仕事があるので年中授業とその準備?を何かとしていますが、私と大橋さんはその時期暇?なのです。

パイプ煙草を吸うのは、いろいろ面倒な手続きと作業を要します。まずパイプに煙草を詰め、この詰めるのも技術がいります。おもむろに火を着けます。上手く吸わないと火が消えるのでたえず金具?(通は熱くても指先で「チョンチョン」する)で押し込みながら、火をまた着けるのです。吸い終わると、掃除が待っています。掃除もいろいろ道具を使ってやるのです。

この作業で30分は持つのです。

好都合なのは、泉さんが「スパ、スパ・・」やっているものですから、上司も僕を怒れないのです。

まじめな話し、暇なときはずいぶん勉強のために工学関連やサイバネティックスなどの本を読みました。

その様子を見て泉さんはいつも、

「君たちはいいなあ、一生懸命になれることがあって?・・」

と羨ましそうに話すのです。

結局、今の社団法人と私があるのは、泉さんのおかげだと思うのです。

話しは別に:暇なときの特技として、大橋さんは目を開けて眠りました。すごいことに、前にある本のページを時々めくるのです。というか、目が細くてメガネを掛けていて、いつもおとなしく騒がないので、寝ているか起きているか分からないのです。ひょっとすると、僕のパイプ煙草と同じく大橋さんの作戦?かもしれません。

それとは関係ありませんが、私は煙草の煙を肺に入れることが出来ないので、吹かすだけです。パイプ煙草もそういうものだそうで、煙を肺に入れないのだそうです。煙草の初体験で肺に入れようとしたら、むせて、痛くて諦めてしまいました。煙草の煙と肺がんの関係が問題になったとき、自分は肺に入れていないのだから大丈夫と思っていたら、この間イヤなことを耳にしました。副流煙は同じように危険なのだそうです。自分の煙を受動喫煙すっるのはあほな話です。

<その③平澤興会長>

平澤興先生は社団法人システム科学研究所の初代会長です。京都大学の総長だった人ですから、僕たち研究員は研究所の行事や忘年会で年に数回お会いする程度です。

一度、忘年会で酔っ払って、先生の頭を「ぺんぺん」した人が居たのですが、先生はニコニコして平気で愉快に笑っていました。

専門は脳神経解剖学だそうですが、僕たち若い研究員に話をするといつも同じ話をします。

「人間の脳細胞は40億個ほどありますが毎日何十万と死んでいきます。そして、脳は使わないとどんどん劣化してダメになるのです。あなたたち若い人は脳をドンドン使ってください。脳はいくらでも成長して輝かしい未来を約束してくれるのです。」

先生は確か40億個と言ったような記憶があるのですが、言われたときに、

「あれっ、お年の先生はもうほとんど脳細胞があらへんやん?・・」

と反射的に思える数字でした。当時、反射的な概数の計算は得意だったのです。

注)計算例50万×365日×60年≒110億で40億なら倍以上

今は神経細胞は約140億個で、それは脳細胞の10%程度、グリア細胞が他を占めていて、全体では1400億以上となることを知っています。

先生の脳細胞は十分あったのです。

<その④佐々木先生>

当時の佐々木綱先生は京都大学の交通工学の教授でした。

私がシステム科学を辞めた後、委員会でよくご一緒しました。と言っても、私は作業委託を受けているコンサルタントの下請けと言う立場です。

始めてお会いしたときは、「佐々木先生は怖い人?」と言う話をする人が居て緊張してお会いしたのです。会って見ると、話と違って非常ににこやかで気さくな先生で「不安?」は吹っ飛びました。

何回か委員会でお会いしていると、私がまだ25歳過ぎで若いからか、大学院の学生か助手と思っているような所が何故かありました。

「金澤君、この間、頼んでおいた計算、うまくいきましたか?・・」

と言う言い方が、学生にレポートの課題を出してその結果を聞くニュアンスそのものなのです。

「実はプログラムに問題があって、まだ答えが出ていません?・・」

と言っても、

「もう少し工夫して、トライしてみなさい、時間はあるのですから!・・」

と言ってくれそうな雰囲気なのです。

委員の先生方を集めておいて「答えがまだ」はない話ですから、そんなことにはならないようにするのですが。

大阪湾岸道路に関する委員会で、先生の京都大学のコンピュータを借りて交通配分の評価計算をしたときの話です。

結果は一応前もって出ていたので、東京へ出張して帰ってからまとめる予定で行ったのですが、東京の作業が徹夜続きで帰りの新幹線だけが睡眠時間という状態でした。夜遅くに事務所に帰って、結果をレポートにまとめるのは不可能と判断したので、一枚の総括表にまとめるだけで精一杯でした。それでも、明け方近くまで掛かったのです。

そんな状態で委員会に出たとき、佐々木先生は瞬時に分かったようです。

「金澤君、結果出たの?・・」

「なに、表にまとめてあるの?・・」

「ほう、十分、十分、分かりやすく上手く出来ているよ・・」

と言ってくれました。前回の委員会では、結果を出して分析レポートを作ることになっていたのです。

話しは別に:私は大学教授がそんなに偉いとは知らなかったのですが、委員会なるものに出ると、着席順で見事に分かります。序列は大学教授、その助手、役所の部長、課長、係長、担当者、受注側コンサルの部長、課長、担当者、そして下請けの私となります。気が遠くなるほど、下等なのです。

ただ、ラッキーなことに、教授の口の利き方1つで私の序列が見事に逆転します。我々下請けが尊敬できる良い先生は、作業者を立てる意味で、まず一番に「金澤さん、どう思いますか?」と聞いてくれるのです。

すると、他の全員が私の序列を教授の次にします。ただし、委員会の中だけの話ですが・・。

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2021年6月29日 (火)

私の世界・知らない世界―終焉の始まり・「いつまで危機を先送りできるか・・!?」

 ヴォルフガング・シュトレークの「資本主義はどう終わるのか」と云う著書について、「いつまで危機を先送りできるか?」という副題がついています。

 欧米や中国(もちろん日本も・・)の銀行やコングロマリットはコロナを迎える前の一昨年、デリバティブや金融派生商品、不動産バブルによる大規模なデフォルト危機の発生が言われていました。

 「この期に及んで、どんな引き伸ばし!方策があるのやろ・・?」

 ・・が、私の感想でした。

 そこでコロナ危機が到来、経済的ダメージでより危機が拡大するのか?と思ったら、大規模な大盤振る舞い=金融緩和やショックドクトリン=火事場泥棒により引き延ばし、先送りが成功しているようです。

 でも、そんなに続けられるものではないと思うのです。

『資本主義はどう終わるのか

【著者:ヴォルフガング・シュトレーク、村澤真保呂() 信友建志()

<レビュー:金井美穂>

「資本主義の終焉」をテーマとした論文や書籍はこれまでもたくさんあった。たとえばドイツでは18世紀初期、イギリスでは19世紀中期以降、資本主義の理論は「危機」に瀕した状態にあると論じられている。とはいえマルクスなどの思想家たちが資本主義体制に疑問を投げかけ、その終焉を予言していたにもかかわらず、資本主義はこれまでずっと生き残ってきた。

しかし今度こそ本当に資本主義が終わるのではないか、というのが著者の見立てである。本書は1970年代からはじまる一連の危機を通して、資本主義と民主主義の崩壊していく過程やその背景を、さまざまな観点から論じる。「資本主義の終焉というテーマの論文を一冊で読めるように」という著者の意向もあって、なかには重複するテーマもある。しかしいずれも、現代のグローバル資本主義体制の根底にある、資本主義および資本主義社会の長期的な危機が、中心的な議題となっている。

資本主義が終わりを迎えるとしても、それは敵対勢力によって駆逐されるからではない。むしろ資本主義が内部にかかえる矛盾の拡大によって、その崩壊は引き起こされる――本書を一読するだけでも、著者のこうした考えを「誤っている」と一概に否定することはできなくなるだろう。

資本主義は今後もこれまでのように存続していくのか、あるいは後継者となるポスト資本主義も見当たらないなか、本当に終焉を迎えるのか。読者に熟考と再考を促す一冊である。・・・

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2021年6月22日 (火)

騙されてはいけない1604―今起こっている福島原発事故・「個人線量情報のデータ置き換わり不適合発生に伴う対応、エクセルが勝手に・・!?」

 東電のHPにあるニュースリリースの参考資料2021622日「福島第一原子力発電所 個人線量情報のデータ置き換わり不適合発生に伴う対応について」からです。

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 東電の表計算ソフトは多分エクセルだと思うのですが、その使い方のミスについて、「個⼈線量の評価対象者を抽出するための表計算ソフトファイル(当⽉分)を開いた状態で、前⽉分の表計算ファイルを開くと、当⽉分と前⽉分のファイル間にリンク付けがないにもかかわらず、関数と引⽤先が同じセルの値が前⽉分のデータに置き換わってしまうことがわかった。・・」などと訳の分からないことを言い出しています。

 特に、「関数と引⽤先が同じセルの値が前⽉分のデータに置き換わってしまう」などと勝手にエクセルが行なったというような説明ですが、当月分の表の関数や書式をマクロで自動的にコピーしていることの思い違いや操作や手順ミスと思われます。

 昔のことですが、たちの悪いユーザーがいて、自分の誤操作を認めようとせず。「何もしないのに、誤動作した・・」とか「触ってもいないのに、変になった・・」と言われたのを思い出しました。

 なお、結果のアウトプットは関数のままにせず、最終的には値にしなければならないのは初歩的な表計算ソフト(エクセル)の常識です。

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2021年5月 2日 (日)

私の世界・知らない世界―「高齢者ワクチン接種に25年?・・!?」

 コロナ禍の御時勢で、ネガティブというか、余り大変だ!という話はしたくないのですが、“現代ビジネス”の野口 悠紀雄一橋大学名誉教授のレポート「高齢者ワクチン接種に25年?デジタル政策の立ち遅れと混乱ここまで・・」は日本の現状を端的に述べていると思うので紹介します。

 日本の場合、コロナ禍はほとんど人災といえ、政府や行政などコロナが始まって以来、まともなことを何もしていません。

 それは韓国や台湾のように情報社会、高度な情報管理社会化につながるので、まあいいか?と思っていましたが、余りにも酷過ぎです。

 聞くところによると、マイナンバーカードが健康保険証として利用されるのもまだ先のようです。

 以下はVRSの概要ですが余りに複雑・煩雑で笑うしかありません。「シンプル イズ ベスト」なのに!

 

 

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『高齢者ワクチン接種に25年?デジタル政策の立ち遅れと混乱ここまで

<とうとう国民の命に直接かかわる事態に>

10日間で4万人だから完了まで25年かかる!  

日本でも412日から待望の高齢者向けのワクチン摂取が始まった。では、どの程度進捗しているのだろうか?

首相官邸ホームページに掲載されている「これまでのワクチン総接種回数(高齢者、都道府県別)」の数字を見て、私はのけぞり、ショックのあまり頭がフラフラになり、気分が悪くなってしまった。

そこには、421日までの10日間での高齢者の接種回数は、全国で39306回と書いてあったのだ。

日本の65歳以上の高齢者の数は約3617万人である。これは、39306人の920倍だ。したがって、いまのペースだと、高齢者の1回目の接種が完了するまでに、10日間の920倍、つまり9200日が必要になる。これは、約25年間だ。

ほとんどの高齢者は、ワクチン接種の前に死んでしまう!

医療従事者確保不能? 接種管理システム機能不全?

多くの人は、これを聞いて、「数字の読み間違えだ」と言うだろう。私自身もそう考えたので、何度も確かめた。読者の方々も、ぜひ首相官邸のページを開いてご自身で確かめていただきたい。

あるいは、接種はまだ本格化していないのだろうか?多くの自治体が、接種のための医療従事者を確保できていないといわれる。そうであれば、今後の見通しはどうなのか?あるいは、データの収集に時間がかかっているのだろうか?

しかし、上記の数字のもととなっている摂取管理システムVRSは、「時間遅れなしに即座にデータをデジタル化できる」という触れ込みだった。ところが、後で説明するように、VRSがうまく機能していない可能性が高い。

だが、仮に数字が1桁違っているにしても、2年半だ。絶望的なことに変わりはない。一体、どうなっているのだろう?また、そもそも摂取管理システムが機能していないこと自体が大問題だ。

ワクチン接種が進むかどうかが日本の命運を決する

一方、東京、大阪などに対して、3回目の緊急事態宣言が発令された。変異株による爆発的な感染拡大が起きている。

昨年47日に緊急事態宣言が発令された時、日本国内での感染者数は1日あたり375人だった。ところが422日時点での感染者数は4973人で。事態は昨年に比べてはるかに深刻だ。

頼みの綱はワクチンの接種だ。ワクチン接種が順調に進んだイスラエル、イギリス、アメリカでは、感染者数が劇的に減少している。

これらの国では、昨年の12月から接種が始まった。今年の1月頃には、感染者数が日本よりずっと多かったのだが、その後激減。いまでは日本を下回っている。そして、生活が正常化に向かいつつある。

ここ数ヵ月間にワクチン接種を進められるかどうかが、日本の命運を決する。政府の最大の課題は、一刻も早く全国民にワクチンの接種を完了させることだ。

本当にワクチンを確保できたのか?

ところが、その肝心なことに関して、政府の約束は誠に心許ない。

訪米中に米ファイザー社トップとの電話会談を行なった菅義偉首相は、国内の接種対象者全員分を9月までに確保できるめどが立ったと表明した。

ところが、2021両日に衆参各院で行われた訪米報告で、「外務省のホームページに『9月』なんて一言も書かれていない」と指摘されると、「相手方の関係もあり詳細は差し控えます」と答え、「9月までに供給されるメド」とした自身の発言の詳細を説明しなかった。

また、国内対象者の接種完了時期を問われても、「実務を担う自治体が作成した計画による」と具体的な言及を避けた。

20日の参院厚労委員会で田村厚労相は「合意書を交わしているわけではない」と答弁。追加供給の「実質合意」を後退させた。

また、自民党の下村政務調査会長は、419日に開かれた党の会合で、「自治体によっては医療関係者の協力が足らず、65歳以上に限定しても、今年いっぱいか、場合によっては来年までかかるのではないか」と指摘した。

要するに、ワクチン接種がどう進むかは、全く分からないということだ。

オリンピック期間中に人員を確保できるのか?

ワクチンの接種を進展させるためには、ワクチンの確保だけでなく、接種にあたる医師や看護婦など医療従事者の確保が必要だ。冒頭で述べたワクチン接種の遅れは、医療従事者が確保できないためである可能性が高い。

今後コロナの感染が拡大すれば、その対応に医療従事者が割かれるので、ワクチン接種のための人員確保はさらに困難になるだろう。

ところで、医療人員確保は、世界のどの国も直面している問題だ。そして、その解決のために、さまざまなことが行なわれている。

例えば、イギリスでは114日から薬局でも注射ができるようになり、薬剤師も注射している。また、ワクチンセンターを24時間稼働させている。

日本でも、人出不足などの問題を克服するために、もっと工夫と努力がなされてよいのではないだろうか?

日本は、それに加えて、オリンピックという問題を抱えている。その期間は、医療従事者が割かれる。すると、ワクチン接種のための医療人員確保は、さらに難しくなるだろう。

オリンピック遂行のために様々なことを犠牲にしなければならないのは、理解できなくもない。しかし、いまの日本人にとって最も切実な課題であるワクチン接種まで犠牲にしなければならないというのは、私には理解できない。

接種管理システムVRSが機能しない

ワクチン接種を進めるためにもう1つ必要なのは、管理ステムだ。

ワクチン接種管理システムVRS412日から稼働した。425日公開の「世界競争に敗北、日本は『ワクチン接種ガラパゴス』に閉じ込められる」で、「これがうまく機能すればよいが、絶対確実ではない」と述べた。ところが、本稿の最初に述べたように、VRSの動作は、どうもおかしい。

詳しく見ると、栃木、埼玉、静岡、滋賀、兵庫、島根、佐賀、大分、熊本の9県で、接種者がゼロになっている。これらの自治体でも、実際には接種は始まっているのだから、ゼロは誤りだとしか考えようがない。

自治体側では、「VRSへの入力作業が厄介で、追いついていない」などとしている。422日の日本経済新聞「早期接種デジタルの壁」によると、多くの自治体でVRSが利用されていない。

システムが複雑すぎて入力できない。接種券の情報を読み取る際に時間がかかったり、誤認識したりする場合がある。また、オートフォーカスが合わない、等々の問題があるとされる。

しかし、それにしても、「ゼロ」というのはどうしたことだろう。自治体にそっぽを向かれているのではないだろうか?

誰が、いつ、どこで、どのワクチンを接種したのかという接種管理ができないと、混乱が起こりそうだ。また 接種がどれだけ進んだかを正確に把握しないと、対策や経済再開の判断はできない。ワクチンパスポートも発行できない。

3システムが併存で混乱

日本のワクチン接種の管理システムは、各自治体が管理する予防接種台帳、VRS、それにVSYSという3システムが併存している。これが混乱を引き起こしている面もある。

V-SYS(クチン接種円滑化システム)は、厚労省が昨年夏から開発していたものだ。しかし、このシステムは、ワクチンを自治体に配送することだけを管理するもので、誰にいつどこで打ったかを記録する仕組みがない。

そこで、内閣官房 IT 総合戦略室が、急遽VRSを開発したのだ。この裏には、内閣と厚生労働省の間の複雑な確執があったと言われている。

そして、VRSが成功するかどうかがデジタル庁の試金石になると言われていた。ところが、これもうまく機能しない。

この国のデジタル政策の立ち遅れと混乱が、ついに国民の命に直接かかわるところにまで及んできた。』(野口 悠紀雄:一橋大学名誉教授)

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