ネットのBBCのニュース記事から、「ガザ戦闘から半年、イスラエルは「ハマス排除」にどれだけ近づいているのか・・」という話です。
最後に、「イスラエルがこの戦闘の目的を達成できているのかはいまだ不透明
・・」としていますが、ガザ地区の死者の累計が3万3千人以上となり、図のような被害地域となってもの事というのは酷過ぎです。
エタニエフはプーチンやゼレンスキーと同様、戦争を私物化していると思うのです。
『【分析】 ガザ戦闘から半年、イスラエルは「ハマス排除」にどれだけ近づいているのか
【2024年4月8日:マーリン・トーマス、ジェイク・ホートン、BBCヴェリファイ(検証チーム)】
イスラム組織ハマスの戦闘員が昨年10月7日にパレスチナ自治区ガザ地区からイスラエル側に侵入し、約1200人を殺害、数百人を人質に取ってから、6カ月が過ぎた。
イスラエルはハマスが同国にとって2度と脅威とならないよう「ハマスを粉砕・破壊」すると誓い、人質全員を連れ戻すと宣言した。
それ以降ガザ地区で続く残酷な戦闘で、同地区の大部分は破壊された。ハマスが運営する同地区の保健省は、少なくとも3万3000人のパレスチナ人が殺害されたとしている。
イスラエル側は、これまでに数千人のハマス戦闘員を殺害し、ガザの地下に張り巡らされた大規模なトンネル網の大半を破壊したと主張している。この地下トンネルは、ハマスが攻撃の実行に利用してきたものだ。
BBCヴェリファイ(検証チーム)は、イスラエル国防軍(IDF)の公式声明とソーシャルメディアへの投稿をくまなく調べ、イスラエルが表明してきた戦闘目的に関して証拠を調べた。
〇ハマス指導者は何人殺害された?
IDFの司令官たちの話をまとめた複数の報告によると、昨年10月7日以前には約3万人のハマス戦闘員がガザ地区にいたと考えられていた。
ハマスの最高指導者と広くみられているイスマイル・ハニエ氏など、同組織の政治部門幹部の多くは外国で暮らしている。しかし、軍事部門指導者の多くはガザ地区内にいると考えられている。
IDFは最近の声明で、昨年の開戦以降、約1万3000人のハマス戦闘員を殺害したと発表した。ただ、その人数をどう算出したのかは明かさなかった。
イスラエルはまた、殺害されたとするハマス指導者一人ひとりの名前も公表している。
昨年10月以降、こうした方法で計113人の名前が挙げられている。その圧倒的多数は開戦後最初の3カ月間に殺害が報告されている。IDFは一方で、今年になってからは、ガザで殺害したとするハマス幹部について3月まで報告してこなかった。
3月26日、IDFはハマスの軍事部門のマルワン・イッサ副司令官を殺害したと発表した。イスラエルの最重要指名手配者の1人とされるイッサ氏は、開戦以降に殺害されたハマス関係者としては最高位の人物だ。アメリカは同氏が殺害されたとの見方を示しているが、ハマス側はこれを認めていない。
IDFは殺害したハマス幹部とする人物の名前を公表しているが、これらの人物がハマスのメンバーであるのかを検証するのは不可能だ。挙げられた名前の中には、ガザ南部でフリージャーナリストとして活動していたムスタファ・スラヤ氏が含まれていた。スラヤ氏は1月、乗っていた車両が攻撃を受けて死亡した。
私たちは、このリストの中に複数の名前が重複して掲載されていることを確認した。そして、殺害したとされる合計人数から重複分を差し引いた。
ガザ以外の場所でも、ハマス指導者が死亡している。1月にはレバノン・ベイルート南部の郊外ダヒエで起きた爆発で、ハマス副政治局長のサレフ・アル・アロウリ氏が死亡した。この攻撃にはイスラエルが関与していると広く考えられている。
一方で、私たちが話を聞いた複数の専門家によると、ガザ地区のハマストップ、ヤヒヤ・シンワル氏など、ガザにいる著名なハマス指導者の多くはまだ生きているとみられるという。
・ガザ地区のハマストップ、ヤヒヤ・シンワル氏
「IDFはハマス指導層の上層部には近づけていない」と、シンクタンク「国際危機グループ(ICG)」のイスラエル・パレスチナ問題担当上級アナリスト、マイラフ・ゾンゼイン氏は指摘する。
「主要な指導者たちに近づくという象徴的なレベルでも、ハマスに代わってガザを支配するというレベルでも、(IDFは目標を)達成できていない」
〇何人の人質がガザに残っている?
イスラエルの公式データによると、昨年10月7日にハマスの人質にされたのは253人。
このうち109人は、捕虜交換の一環あるいは別の取引によって解放された。
別の3人は、IDFの軍事作戦で直接救出された。
これまでに人質12人の遺体が収容されている。うち3人はIDFが作戦中に殺害したと認めている。
生存が確認されている人質の最年少は18歳、最年長は85歳。
ガザに残る129人の人質のうち少なくとも34人はすでに死亡していると、イスラエルは発表している。
一方でハマスは、IDFの空爆のせいでもっと多くの人質が死亡したとしている。こうした主張が正しいかどうか検証するのは不可能だ。
ハマス奇襲時に連れ去られた最も幼い人質2人は、当時生後9カ月だったクフィルちゃん、4歳だったアリエルちゃん兄弟だった。2人は死亡したと報じられているが、確認はされていない。
・解放された人質と抱き合う家族
〇ハマスのトンネル網はどの程度破壊された?
イスラエルは「ハマス排除」の一環として、ガザの地下に張り巡らされた広範なトンネルを破壊すると約束した。ハマスは地下トンネルを使って、モノや人を移動させている。
「ガザ地区を、市民が暮らす層と、ハマスがいる層の2層構造だと考えてください。我々は、ハマスが築いた第2の層に到達しようとしている」と、IDFのジョナサン・コンリクス報道官は昨年10月に語った。
ハマスは以前、トンネル網は全長500キロメートルにおよぶとしていた。これを独自に検証する術はない
・ハマスは地下トンネルについて、全長500キロメートルにもおよぶとしている。これが事実かどうか検証するのは不可能だ
私たちは、破壊したトンネルの数と、トンネル網全体のうちどれくらいの割合を破壊したのかをIDFに尋ねた。IDFからは、「ガザのテロリストのインフラを大量に破壊した」との回答があった。
IDFは時折、ハマスのトンネルを発見したことを示す証拠を提示している。例えば昨年11月には、ガザ市内のアル・シファ病院の地下にあるトンネル網の一部を撮影した動画を公開した。イスラエルは同病院の地下をハマスが司令部として使っていたと主張した。
IDFが発見したトンネル網全体の範囲を特定するため、BBCヴェリファイは昨年10月7日から今年3月26日までの間にソーシャルメディア「テレグラム」上でガザのトンネルに言及したIDFのメッセージをすべて調べた。
全メッセージのうち198通は、トンネルの発見に言及するもので、トンネルやトンネル坑道の位置を特定したと書かれていた。別の141通には、トンネルを破壊あるいは解体したとする内容が書かれていた。
メッセージのほとんどは正確な詳細や具体的な場所を含んでおらず、IDFが発見または破壊したトンネル網の範囲について裏付けは取れなかった。
ガザの地下迷宮は、複数のルートや大小さまざまな部屋、トンネルと地上が接する地点など、いくつかの構成要素でできている。
・6カ月間にわたる戦闘でガザ地区の大半は廃墟と化した
私たちが分析したメッセージのうち36通は、合わせて400以上のトンネル坑道に言及していた。しかし、坑道をトンネル全体と同等に見なせば誤解を招きかねないと、「地下戦」専門家の、イスラエルのライヒマン大学のダフネ・リシュモンド=バラク博士は指摘する。
坑道を単純に破壊しただけではトンネル網自体は無傷のままだと、同博士は言う。「今回の戦闘では、トンネルの完全破壊はあまりみられなかったと思う」。
〇イスラエルの報復攻撃、高い代償払う
ハマスを排除するというイスラエルの戦闘目的は、ガザのパレスチナ人に多大な犠牲を強いてきた。ハマス運営のガザ保健省は、イスラエルの攻撃で3万3000人以上が死亡したとしている。
同省が4月5日に発表した最新の人口統計によると、死者の70%以上は女性と子供だった。
IDFはハマスのインフラ破壊を狙っており、ガザ住民の多くは家を追われたり、住む場所を失ったりしている。国連は、170万人以上が国内避難民(IDP)となっているとしている。
住宅地が廃墟と化し、にぎやかだった通りはがれきで覆われた。大学は破壊され、農地が荒らされた。
衛星データ分析では、昨年10月7日以降、ガザ地区にある建物の56%以上が損壊または破壊されたことが明らかになった。
開戦から6カ月が過ぎた。しかし、イスラエルがこの戦闘の目的を達成できているのかはいまだ不透明だ。』
追加取材:ロブ・イングランド、マリアム・アフメド、ジェイミー・ライアン、エマ・ペンジェリー
(英語記事 Six months on, how close is Israel to eliminating Hamas?)